共同研究・競争的資金等の研究 - 小野寺 理
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筋萎縮性側索硬化症とTDP-43:その病理像の全貌と分子病態機序の解明
研究課題/領域番号:20240037
2008年 - 2010年
制度名:科学研究費補助金(基盤研究(A))
研究種目:基盤研究(A)
提供機関:文部科学省
高橋 均, 譚 春鳳, 豊島 靖子, 小野寺 理, 譚 春鳳, 柿田 明美, 崎村 建司, 桑野 良三, 横山 峯介
担当区分:連携研究者 資金種別:競争的資金
配分額:37440000円 ( 直接経費:28800000円 、 間接経費:8640000円 )
我々は、臨床病理学的並びに免疫組織化学的に筋萎縮性側索硬化症剖検例を検討し、孤発性ALS、は広汎な部位の神経細胞及びグリア細胞の双方を侵すTDP-43プロテイノパチーであることを示した。また、TDP-43遺伝子改変マウスを作製し、ヒト患者凍結脳と併せ分子生物学的解析を行った結果、ALSは"TDP-43の機能としての他の遺伝子に対する選択的スプライシングの異常、あるいはTDP-43自身への選択的スプライシングの異常"によって引き起こされる可能性を示唆する今後に向けた予備的データを得ることができた。
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核内小体機能不全による非翻訳リボ核酸の異常による運動神経細胞死の研究
研究課題/領域番号:20659139
2008年 - 2009年
制度名:科学研究費補助金(萌芽研究, 挑戦的萌芽研究)
研究種目:萌芽研究, 挑戦的萌芽研究
提供機関:文部科学省
小野寺 理
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態機序は不明であり,有効な治療法はない.治療法開発には運動神経細胞死の病態機序の解明が必須である.ALS患者の神経細胞にはTDP-43の異常蓄積が認められる.TDP-43は核蛋白であり,他の核内小体であるCajal小体,Gemと共局在する.興味深いことに,これらの核内小体には,遺伝性運動神経細胞死を来たす原因遺伝子であるSMNとアプラタキシンも局在する.このことから運動神経細胞死において核内小体が重要な役割を果たすと考え,これを検証する.具体的には,神経細胞死においてCajal小体を始めとする核内小体の挙動を検討する.さらに,核内小体が,その成熟に関与する非翻訳RNA(ncRNA)の量的変化を解析する.対象は孤発性ALS,TDP-43変異をもつ家族性ALS,TDP-43欠損マウス,変異TDP-43導入マウス,アプラタキシン欠損マウスとする.ALS患者において,Cajal小体の数,ncRNAの解析を行い,それらが有意差をもってALS群の患者運動神経細胞,神経組織で低下していることを示した.
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研究課題/領域番号:19390236
2007年 - 2009年
制度名:科学研究費補助金(基盤研究(B))
研究種目:基盤研究(B)
提供機関:文部科学省
小野寺 理, 高橋 俊昭, 小澤 鉄太郎, 豊島 靖子
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:15990000円 ( 直接経費:12300000円 、 間接経費:3690000円 )
私たちは本邦で最も多い劣性遺伝性脊髄小脳変性症であるAOA1/EAOHの原因遺伝子APTXを単離し,その機能を解析してきました.DNAは自然に損傷し,その維持のためには絶えず修復する必要があります.損傷したDNAの断端は修飾をうけるため,このままでは修復にとって障害となります.私たちはAPTXがこの損傷した断端を修復する活性を持つことを明らかにしました.この事により,本症の病態を明らかにしました.
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多系統萎縮症の病理学的強調部位を決定する分子遺伝学的要因の検討
研究課題/領域番号:19590983
2007年 - 2008年
制度名:科学研究費補助金(基盤研究(C))
研究種目:基盤研究(C)
提供機関:文部科学省
小澤 鉄太郎, 高橋 均, 小野寺 理
担当区分:連携研究者 資金種別:競争的資金
配分額:1430000円 ( 直接経費:1100000円 、 間接経費:330000円 )
本邦の多系統萎縮症(MSA)症例における病理学的サブグループの内訳を明らかにする目的で, 連続した50例のMSA剖検例において, 既報の方法(Ozawa T, et al. Brain 2004 ; 127 : 2657-2671)を用いて黒質線条体優位型, オリーブ核橋小脳優位型, 両病変同等型の分類を行った. 検索した50例のMSA剖検例における病理学的サブグループの内訳は, 黒質線条体優位型は18%, オリーブ核橋小脳優位型は40%, 両病変同等型は42%であった. この結果は, 日本人MSAでは臨床的にMSA-Cの頻度が優位であるとする報告を病理組織学的な観点から裏付けるものと考えられる. さらに, 黒質線条体優位型の頻度が比較的高い英国人MSAにおける病理学的サブグループの内訳とかなり異なる結果となり, MSAサブグループの病変分布の特徴において, 地域あるいは人種間の差違が存在する可能性がある.
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研究課題/領域番号:17019006
2005年 - 2009年
制度名:科学研究費補助金(特定領域研究)
研究種目:特定領域研究
提供機関:文部科学省
辻 省次, 後藤 順, 高橋 祐二, 百瀬 義雄, 小野寺 理, 村山 繁雄, 後藤 順, 高橋 祐二
担当区分:連携研究者 資金種別:競争的資金
配分額:781600000円 ( 直接経費:781600000円 )
本研究は,大規模ゲノム解析に基づき,遺伝性及び孤発性神疾患の病因遺伝子及び病態機序の解明を進め,疾患の予防や治療に向けて結び付けていくことを目的とした.単一遺伝子疾患から多因子疾患まで幅広く研究対象として研究を進めた.単一遺伝子疾患家系,多発家系に対して,DNA microarrayを用いたハイスループット連鎖解析システムを構築し多くの疾患の研究に応用した.単一遺伝子疾患については, cerebral autosomal recessive arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy (CARASIL)の病因遺伝子の同定を達成した.多因子疾患については,パーキンソン病について,オッズ比の非常に高い疾患感受性遺伝子を同定し,common disease-multiple rare variants仮説へのパラダイムシフトの重要性を提唱した.
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内在性蛋白質分解カスケードの賦活によるポリグルタミン病の治療戦略
研究課題/領域番号:17300109
2005年 - 2007年
制度名:科学研究費補助金(基盤研究(B))
研究種目:基盤研究(B)
提供機関:文部科学省
山田 光則, 小野寺 理, 高橋 均
担当区分:連携研究者 資金種別:競争的資金
配分額:11920000円 ( 直接経費:10900000円 、 間接経費:1020000円 )
下オリーブ核神経細胞の二次性肥大反応における発現遺伝子群から,ポリグルタミン病の変異蛋白質の分解に関わる分子種を探索した.マウスに片側性の下オリーブ核肥大を惹起させ,非肥大側を対照としたmRNA発現遺伝子解析を行い,約36,900種の遺伝子中,肥大側で約890種(2.41%)の発現増加、約530種(1.44%)の発現低下を明らかにした.さらに,肥大側と対側で蛋白質発現の差異をEttan^<TM>DIGE(2-D Fluorescence Difference Gel Electrophoresis)システムにより検討した.この結果,肥大側優位に発現が増加している蛋白質を4種類特定し得た.2種はアデノシン三リン酸合成酵素に関連する分子であり,ヒトおよびマウスの下オリーブ核肥大神経細胞において発現の充進が認められた.伸長ポリグルタミン鎖を含む変異蛋白質が核内蓄積した病的神経細胞では有意な発現亢進は認められず,当該分子の発言は下オリーブ核神経細胞の二次性肥大反応に関連したものと示唆された.他の2種類のうち1種類はカルシウム結合蛋白であり,ヒト剖検脳では正常の下オリーブ核神経細胞は陰性であったが,肥大神経細胞では胞体内にびまん性の陽性像が得られた.この変化はDRPLAおよび対照例の下オリーブ核肥大で共通に観察されたことから,ポリグルタミン病に特異的な反応ではなく,神経細胞の肥大現象に関連した分子発現と思われた.一方,実験的に片側性下オリーブ核肥大を作成したマウス(作成1ヶ月後)の脳組織では,ヒト脳で観察されたような明確な陽性像はこれまで得られなかった.
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内在性相補鎖RNAによる遺伝子発現調節機構に注目したシヌクレイン関連蛋白の解析
研究課題/領域番号:16659229
2004年 - 2005年
制度名:科学研究費補助金(萌芽研究)
研究種目:萌芽研究
提供機関:文部科学省
小野寺 理, 柿田 明美
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:2800000円 ( 直接経費:2800000円 )
多系統萎縮症(MSA)は本邦に一万人程の罹患患者がいると考えられるが,その原因および有効な治療戦略は提案されていない。本症はGlial Cytoplasmic Inclusion(GCI)というα-synucleinからなる神経細胞内封入体を特徴とする。α-synucleinが主成分である神経細胞内封入体にはパーキンソン病で認められるLewy小体があるがGCIではsynphilin-1の存在が特徴的である。このことからsynphilin-1とシヌクレイン関連蛋白の関与が疑われている(Acta Neuropathol 2002 103)。我々はこれらの遺伝子の特定のハプロタイプが疾患感受性を規定すると考え,synphilin-1を含むシヌクレイン関連遺伝子のMSA患者群におけるSNPsとEM法を用いたハプロタイプ解析を行った。しかし,これら遺伝子の翻訳領域のハプロタイプ解析では疾患群と対照群で差を見いだすことはできなかった。今年度はsynphilin-1近傍のマーカーにて,有意差を認める領域を同定し,本領域の一塩基置換が,疾患の発症との関与を示した.
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新しいポリグルタミン病:その病理組織学的発見から原因遺伝子の同定へ
研究課題/領域番号:16390104
2004年 - 2005年
制度名:科学研究費補助金(基盤研究(B))
研究種目:基盤研究(B)
提供機関:文部科学省
高橋 均, 豊島 靖子, 山田 光則, 小野寺 理
担当区分:連携研究者 資金種別:競争的資金
配分額:6000000円 ( 直接経費:6000000円 )
臨床的、病理組織学的にこれまで報告のない小脳変性症の3家系、3剖検例について臨床症状、および病理組織学的所見を検討した結果、それぞれが独自の臨床症状を呈し、中枢神経系の障害部位が明らかに異なり、1C2免疫染色によって陽性となる多数の核内封入体もまた、それぞれ特徴ある分布で存在していることを確認した。そのうち、1家系1剖検例でSCA17のホモ接合体であることが判明した。SCA17ホモ接合体の報告はこれまで全くなく、臨床病理学的所見と併せ、報告した。当研究所ではすでに、胎児脳cDNAライブラリーより単離された300個以上の新規クローンに基づく、増大CAG繰り返し配列を持つcDNAシークエンスとプライマーセットを開発しており、これを用いた未解明神経変性疾患の大規模スクリーニングシステムが確立している。未知の2家系についてはこれらのヒト脳で発現している増大ポリグルタミン鎖について増大の有無を確認したが、その異常伸長を認めたものはない。さらに未知の2家系中の1家系では通常のウエスタンブロッティング法により、1C2により染色される蛋白の存在を確認していたが、同サンプルの2次元電気泳動と2次元のウェスタンブロッティングを行うことで、原因蛋白(ポリグルタミンを有する)と考えられるスポットを複数同定するに至った。同定したいくつかのスポットを単離し、MALDI-TOF MS(当研究所備品)を用いてポリグルタミン鎖を持つペプチドの周辺アミノ酸配列を決定した。単離したスポットには短いポリグルタミン鎖を有する蛋白が含まれていた。
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研究課題/領域番号:15390272
2003年 - 2004年
制度名:科学研究費補助金(基盤研究(B))
研究種目:基盤研究(B)
提供機関:文部科学省
小野寺 理, 小宅 睦郎, 五十嵐 修一
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:14900000円 ( 直接経費:14900000円 )
1.増大ポリグルタミン鎖の転写障害機序の時間軸の解明(小野寺)テトラサイクリンで発現誘導可能な、ポリグルタミン鎖含有蛋白の、安定発現系を開発した。この系を用い、増大ポリグルタミン鎖が、発現誘導を受けたのち引き起こされるCREB依存性の転写障害の時間軸を明らかとし,CRE配列依存性の転写障害が極めて早期から引き起こされること,凝集体の形成とは関連がないことを明かとした.さらにこの安定発現系の解析から,増大ポリグルタミン鎖が早期からUPS系に障害を引き起こすことを明かとし,かつ,増大ポリグルタミン鎖の細胞内代謝が遅延していることを明らかとした.加えてこの転写抑制に先行する、増大ポリグルタミン鎖の初期変化を可視化することに成功した。2.アプラタキシンの機能の解明(五十嵐)ヒトAPTXはXRCC1と結合することを我々は明らかとした.この関係より、まずNERに関係する他の蛋白(polynucleotide kinase phosphatase(PNKP), poly(ADP-ribose)polymerase, DNA-polymerase-β,DNA ligase IIIα)との結合の有無を、免疫沈降法にて確認し,APTXがpoly(ADP-ribose)polymeraseと複合体を形成することを明らかとした。さらにAPTXの新規機能を明らかとした。3.アプラタキシンノックアウトマウスの解析(小宅)キメラマウスよりホモ接合体を作成した。XRCC1など多くのDNA異常修復関連蛋白のノックアウトマウスホモ接合体は胎生致死であることが知られている。しかし、得られたAPTXホモマウスは胎性致死ではなかった.現在まで(2年)表現型を表してはいない。この線維芽細胞はDNA損傷を誘発する薬剤に対して脆弱性を示すことを明らかとした。
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研究課題/領域番号:14207029
2002年 - 2003年
制度名:科学研究費補助金(基盤研究(A))
研究種目:基盤研究(A)
提供機関:文部科学省
辻 省次, 小宅 睦郎, 小野寺 理, 後藤 順
担当区分:連携研究者 資金種別:競争的資金
配分額:39650000円 ( 直接経費:30500000円 、 間接経費:9150000円 )
これまでの研究で,眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早発型失調症(early-onset ataxia with ocular motor apraxia and hypoalbuminemia, EAGH)の病因遺伝子を同定してアプラタキシン(aprataxin)遺伝子と命名した.本研究は,アプラタキシンの生理的機能を明らかにし,EAOHの病態機序を解明し,治療法開発のための基盤を作ることを目的とする,これまでの研究で,alternative splicingによって生成される2種類のアプラタキシンmRNA (short formおよびlong form)について,long form aprataxinが主要なisoformであること,核内に存在するタンパクであること,その核内局在にはN末端近くの核移行シグナルが重要であることを証明した.aprataxinの生理的機能については,long form aprataxinが,XRCC1 (X-ray repair cross-complementing group 1)と結合すること,aprataxinがpolynucleotide kinase 3' phosphataseに相同性を有することから,1本鎖DNA修復に関与する可能性が考えられ,5'-kinase活性,3'-phophatase活性を測定する実験系を構築して解析を行い,aprataxinが5'-kinase活性,3'-phosophatase活性を有することを証明し,本タンパクが神経系で働く新たな一本鎖DNA修復酵素として働いていることを証明した.
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ポリグルタミン病のDystrophic Neuritesの神経細胞障害機序の研究
研究課題/領域番号:13670635
2001年 - 2002年
制度名:科学研究費補助金(基盤研究(C))
研究種目:基盤研究(C)
提供機関:文部科学省
小野寺 理, 小宅 睦郎
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
今まで、我々は長さ依存性にかつ閾値をもってポリグルタミン鎖が凝集体を作ること、この凝集体形成が周辺のアミノ酸配列により強く影響を受けることを明らかとしてきた。さらに、この凝集体がCOS細胞の細胞質内ではMTOC(microtubules organizing center)に形成されintermediate filamentsと密接な関連があることを明らかとしてきた。またmicrotubules networkを破壊してもaggregationは形成されるがMTOCへの集積は認めず、核近傍のaggregationが形成されるためにはmicrotubules networkを介した移送が必要であることを明らかとした。この現象は細胞内unfolding Protein分解機構であるaggresomeと同じ性質を有している。これらの実験により増大ポリグルタミン鎖のCOS培養細胞内での処理過程は明らかとなった。さらに細胞内での不要蛋白処理機構を確認するために、数種類の異なる長さの増大ポリグルタミン鎖を有したstable inducible cell lineをNeuro2a、HEK293で作製した。この細胞株はFlp-inシステムを用い、全く同一のShgle integration siteへの導入株であるため、他の要因を可能な限り除去して確認できる系である。この系を用い、増大ポリグルタミン鎖の細胞内代謝が長さ依存性に影響を受けていることが確認されている。今後、その細胞内代謝の違いが細胞機能に与える影響について軸索輸送を含めさらに検討を加える予定である。
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研究課題/領域番号:12210008
2000年 - 2004年
制度名:科学研究費補助金(特定領域研究(C), 特定領域研究)
研究種目:特定領域研究(C), 特定領域研究
提供機関:文部科学省
辻 省次, 小宅 睦郎, 成瀬 聡, 小野寺 理, 清水 潤, 後藤 順, 高橋 祐二
担当区分:連携研究者 資金種別:競争的資金
配分額:244200000円 ( 直接経費:244200000円 )
ポリグルタミン鎖をコードするCAGリピートの異常伸長によって発症する疾患は,歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)を始めとして現在9つの神経変性疾患が見いだされており,神経細胞の変性に関して共通の発症機構が存在するものと考えられる.本研究では,全長のヒト変異DRPLA遺伝子を単一コピーで導入したトランスジェニックマウスを作成し,ヒトにおける病態機序をよく反映するモデルマウスを確立した.このモデルマウスにおいては,神経細胞死は観察されないこと,病態機序の本質が,伸長ポリグルタミン鎖を有する変異DRPLA.タンパクの核内集積とその結果としての核の機能障害であることを見出した.核の機能障害については,培養細胞系を用いた,レポーター遺伝子による解析,内在性のcAMP応答遺伝子を指標にした解析から,CREB-依存性の転写活性化の障害を見出した.さらに,Q76,Q113,Q129の3種類のDRPLAマウス(変異DRPLA遺伝子を同一のintegration siteで,単一コピーで有する)を用いて,4週,8週,12週で詳細な遺伝子発現プロファイリングを行い,2-way ANOVAに基づき,CAGリピート長,時間依存性に発現が有意に変化する遺伝子を,多数同定した.この発現量が時間依存性,CAGリピート長依存性に低下する遺伝子群の中には,c-FOS, EGR-1,preprosomatostatin, neuropeptide Yなど,CERB-依存性転写活性化が関与する遺伝子が含まれており,ポリグルタミン病においてCREB-依存性転写活性化が障害されていること,その緩和が治療法開発のターゲットになることを示した.
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研究課題/領域番号:12307014
2000年 - 2001年
制度名:科学研究費補助金(基盤研究(A))
研究種目:基盤研究(A)
提供機関:文部科学省
辻 省次, 小野寺 理, 小林 央
担当区分:連携研究者 資金種別:競争的資金
配分額:34980000円 ( 直接経費:31200000円 、 間接経費:3780000円 )
本研究においては,遺伝性神経変性疾患の発症機構として,CAGリピートの異常伸長に焦点を当て,1.CAGリピートの異常伸長による疾患を同定するためのアプローチ,2.CAGリピートの異常伸長による神経細胞の変性機構を解明することを目的に研究を行った.1.CAGリピート病の侯補遺伝子を検索するアプローチとして,脳で発現している遺伝子の中でCAGリピートを有する遺伝子群に着目して,遺伝子クローニングを行った.その結果,CAGリピートを有するcDNAとして,重複クローンを除いて,92個の独立したクローンを得た.これらのcDNAクローンの中で,CAGリピート数が10以上のものを疾患候補遺伝子と考え,41個のクローンについて,primer pairを設定して,PCR条件の設定を行い,病因遺伝子不明の遺伝性神経変性疾患症例のパネルを用いて,候補疾患遺伝子として検索を続けている.2.CAGリピートの異常伸長による遺伝性神経変性疾患の病態機序については,変異タンパクの核移行と核内集積による核の機能障害の実態を明らかにすることを目的に,われわれがこれまでに作成したDRPLAトランスジェニックマウス(Q129マウス)を用いて,遺伝子転写障害について検討を行った.DNA chipによる解析を行った結果,down-regulationされている遺伝子として78遺伝子,up-regulationされている遺伝子として16遺伝子を同定した.これらの遺伝子の転写障害の程度は時間依存性に顕著になることを見出した.down-regulationされている遺伝子の中にはcAMP応答遺伝子群が多数含まれており,これまで見出した,伸長ポリグルタミン鎖によるCREB-依存性転写活性化の障害機構を支持するものであった.
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ポリグルタミン病における凝集体と神経細胞死の関連の解明と凝集体阻害剤の探求
研究課題/領域番号:11770325
1999年 - 2000年
制度名:科学研究費補助金(奨励研究(A))
研究種目:奨励研究(A)
提供機関:文部科学省
小野寺 理
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
遺伝性脊髄小脳変性症の内、現在8疾患がCAG繰り返し配列によりコードされる増大したポリグルタミン鎖により引き起こされることが明らかとなっている。これらの疾患ではCAGリピート数の増加に伴い発症年齢が若年化する傾向が知られているが、同じCAGリピート数でも疾患間で発症年齢が異なる。この理由については明らかにされていない。昨年度、我々はポリグルタミン鎖周辺のアミノ酸配列が増大ポリグルタミン鎖の凝集体形成能に影響を与える可能性を考え、truncated ataxin2,huntingtin,DRPLAP,ataxin3においてその凝集体形成能の違いと,凝集体形成能に及ぼす周辺アミノ酸配列の影響,及び個々のポリグルタミン病との関連を検討しCAGリピートの長さ依存性に34から36リピート間に閾値を持って凝集体形成能の増加を認めること、56CAGリピートを共通に含むtruncated ataxin2,huntingtin,DRPLAP,ataxin3の発現ではtruncated ataxin2及びhuntingtinがtruncated DRPLAP及びataxin3に比べ高率な凝集体形成能を示し、ヒトでの疾患重症度との傾向と相関することを報告した。今年度は同蛋白の凝集体形成能を変異を導入することにより変化させることができるか否かをtrancated ataxin2の変異導入体を用い検討した。凝集体形成能には周辺アミノ酸配列の疎水性が大きく関与していることが疑われたため,疎水性アミノ酸を親水性アミノ酸に変えた変異体を作成し、その凝集体形成能を検討した。その結果親水性アミノ酸導入変異体では凝集体形成が強く抑制された。この結果は増大ポリグルタミン鎖の凝集体形成能が僅かなアミノ酸変異により変化得る可能性を示している.
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Neurodegenerative diseases
資金種別:競争的資金